Illumination

主人公の幸せが一秒でも続くように

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【映画】IT2 イット THE END “それ”が見えたら、終わり【感想】※ネタバレ注意

【映画】IT2 イット THE END “それ”が見えたら、終わり【感想】※ネタバレ注意

 

とにかく面白かったです。3時間があっという間に過ぎ去るくらいに退屈しない演出とサクサク進んでいくストーリー展開でした。あとホラー映画でこんなに感動することがあるのかってくらい泣けました(恐怖ではなく感動の方)

前作を去年の夏に映画館で鑑賞してまして次回作があるなら同じような時期かと思いきやがっつり冬の公開で、冬にホラー映画見るって冷凍庫の中でアイス食べるくらい追い詰められてるなって思うんですけど「1」のときは子供だった彼らがその後どうなったのかとか、“それ”(ピエロ=ペニーワイズ)がどうやって退治されるのかなとか、自分がピエロに遭遇したときの参考にしようようと思って(遭遇したくないけど)鑑賞しました。単純にピエロ物のホラーが好きなのもあります。

ストーリーの冒頭はお祭りデートを楽しむゲイカップルの登場から始まります。
小さな子供に混じって本気で射的をしたりキスをしたりとっても微笑ましいシーンだったんですがそれもつかの間です。街の不良がやってきて「ゲイだから」という理由で絡まれしまいには「街を出ていけ」と暴力を振るわれます。それだけでも見てられないくらいヒドイんですが片方は喘息の呼吸器を奪われ、意識がなくなるまで殴られたあと橋から川に放り投げられてしまうんです。その川も穏やかではなく割と流れの早い川で、こんなのもう殺人ですよね。この時点でペニーワイズよりもコイツらの方がヒドイじゃん…って思って恐怖というかこの街の冷たさというか、冒頭から心がえぐられるようなシーンを見せつけられました。恋人が投げられたのを目の当たりにして助けに向かう彼氏ですが川にの下まで向かうとそこには自分の恋人を抱えているペニーワイズが。あ、助けてくれたのかな?頼むからそのまま返してあげてね!と思いましたがそんな良心のあるピエロがホラー映画の主人公な訳もなく、あの独特な大口を開けて恋人の心臓をガブリと食べてしまいます。その光景を見た彼氏の叫びが本当に悲痛で悲しかった…。

「1」でペニーワイズから逃れた少年少女はいつかまたこの街で“それ”が現れたらもう一度集まろう、という約束の元この時の仲間であるアフリカ系の少年、マイク(イザイア・ムスタファ)の呼びかけで再び彼らは街に戻ります。「2」は少年期だった「1」から27年後の世界ですからもう40歳設定にはなっている彼らがどんな大人になっているのかもこの作品の見どころですよね。個人的には、というか誰の目から見てもそうなんですが一番変わったのはベンですよね!子供の頃はぽちゃりと太っていていじめられていたあのベンがなんと痩せてイケメンで、仕事の出来るいい男性になっておりました。やーーー惚れる。ストーリーを追うごとに見える彼の性格とか所作とかもこの中ではダントツにかっこいいです。しかも27年経った今でもヘバリー(ジェシカ・チャステイン)への想いを胸に秘めたまま大人になっていて…正直こんなにかっこよくて仕事もできるベンなら引く手あまたでモテるだろうに…。なんて男前なんでしょう…。このときヘバリーはお金持ちそうだけどDVの激しい男性と結婚してましたがマイクの呼びかけをきっかけに指輪を捨て身一つと少ない荷物で彼らと再会します。27年振りに見たヘバリーの、変わらない美しさにぽわわーんと見とれているベンが可愛かったですね。中華料理屋さんでのやりとりは同窓会のようでみんな楽しそうに飲み食いしていたのが微笑ましかったです。会話もつい「ふふ」と笑いの出るような内容でIT2の中でも束の間の息抜きタイムのようでした。(その後ペニーワイズの幻覚で中華料理屋さんのテーブルや内装を破壊していたシーンは、なんというか店側がとても不憫でしたね(笑)修繕費は折半?(笑)海外の映画で修繕費とかリアルなことはさらっと流すようなスタイルとても好きです。)

IT2はひやっと背筋の凍るような恐怖というよりは見ている側を驚かすような演出が多かったなという印象があります。「怖い」と感じるより「おお、びっくりしたー…」となるようなシーンが多く、集まったルーザーズそれぞれが街に戻り記憶のピースを取り戻す回想は特にそう思わされることが多かったです。特に奇妙でホラー要素を感じたのはベバリーがかつて住んでいたアパートに立ち寄るシーンです。呼び鈴を鳴らすと出てきたのでは父親ではなく現在の住居人である老婆。父親は既に亡くなっていたようです。その老婆、ヘバリーを「お茶でもいかが」と部屋に誘います。遠慮気味のヘバリーでしたが老婆特有の親切心から断り切れず「じゃあ、一杯だけ」と部屋にお邪魔します。ヘバリーを迎え入れた老婆が部屋の扉を意味深に閉じるあたりからもう怖かったです。こう、扉を閉めるときの隙間から眼球だけ動かして辺りを見渡す所作がもう…絶対怪しいだろうオーラで溢れておりました。老婆がお茶を入れている間「部屋は好きに見て行ってね」というのでお言葉に甘えかつて住んでいたアパート内の部屋を懐かしむような、トラウマを思い返すような、かつてここであったいろんな出来事を思い出しながら部屋を見渡すヘバリー。そこで思い出したように部屋の下にある木の出っ張りをハサミでこじ開けます。流石に今は老婆の部屋なのだから大胆だなあ…と思い見ているとそこにはヘバリーが12歳のときに貰っていた絵はがき(ラブレター)がありました。そのハガキに書かれている詩がまた素敵ですよね。


―――君の髪は冬の炎 1月の残り火 僕の心も燃える

これはかつてベンがヘバリーに送った言葉です。とてもロマンチックですよね。ヘバリーに恋心を頂いていたベンが秘めたる胸の内をこの詩にのせてヘバリーに送ったものですが当時も、27年後の今もこれを送ってくれたのはビルだとヘバリーは勘違いしています。とっても切ないです…。それはベンが書いたんだよー!と教えたくてたまりませんでした。学校からのいじめや父親からの虐待を受け辛い毎日だった当時のヘバリーにとってのこの絵はがき(ラブレター)は荒んだ毎日に差す一筋の光のような存在だったと思います。そんな懐かしい思い出の絵はがきを持って老婆の元に戻りますが話をしている間に違和感を覚えたり、ついにこの老婆の怪しさに気付いていきます。クッキーを取りにいく老婆がキッチン越しで奇妙な動きをしたりだんだんと裸になっていく姿はもう色んな意味でホラーだしこれぞR15だなと思いました。その老婆もペニーワイズの作った幻覚だと知ると慌てて逃げるヘバリー、飛び出したアパートを改めてみるとそこはとても人が住んでいたとは思えない廃墟のような建物…。初めから全て幻覚だったんですね。

他のメンバーもペニーワイズを倒すためそれぞれが記憶のピースを探して街に戻ります。

そうして持ち寄ったのは

ビル…弟のジョージーに作った舟
ベバリー…ベンからの絵はがき(ラブレター)
ベンは…ヘバリーのサインが書かれたアルバムの1ページ
エディ…呼吸器
マイク…ヘバリーが投げた石
リッチー…ゲームセンターのコイン
スタンリー…秘密基地で蜘蛛の巣避けにしていたシャワーキャップ
(スタンリーは自殺してしまったのでこれはリッチーが持ってきていました。優しい)

さてこれでどうやってペニーワイズを倒すの?と気になっておりましたらマイクが取り出したのはかつてペニーワイズを封印したことのあるなんとか族という部族が使っていた木の壺。…これでどうやって?と思いましたが使い方としてはペニーワイズの住処である洞窟に入ってみんなの記憶を持ち寄った上記のアイテムをこの中で燃やし、呪文を唱えその中に封印するというもの。ドラゴンボールでピッコロ大魔王を封じるのに「魔封波」という技で電子ジャー(炊飯器)に封じ込めたシーンありましたよね。大体あんな感じです。結論から言えばこれ、失敗します。ピッコロ大魔王のときも二度目は失敗してましたし、そもそも過去でも成功してないようか会話をしていましたよね。「未来は違うかもしれない!」とマイクは言ってましたが成功の確証もなく連れてこられた面々はマイクに当たり散らします。弱るどころが皆の恐怖が大きくなったせいで力を増していくペニーワイズは巨大化しルーザーズに襲い掛かります。逃げ惑うルーザーズたちはまたペニーワイズに幻覚を見せられ、その中で精神的に殺されそうになります。それぞれが過去のトラウマを見せられる中でヘバリーはかつて学校でいじめられていたときのトイレの中に閉じ込められ溢れ出る血の海に溺れそうになります。ベンは自分が作った秘密基地の中で砂に埋もれ生き埋めにされそうになるんですが最後の最後でベンはヘバリーの名前を叫びます。「愛してる!ヘバリー!君の髪は冬の炎1月の残り火 僕の心も、」と。その声を聞いてようやくヘバリーはあのときの絵はがき(ラブレター)がベンからの送りものだったと気付きます。わたしは作中でこのシーンが一番泣けました…。すると二人の想いがペニーワイズの幻覚を打ち消したのか、見ていた映像は消え「あなただったのね、ベン」と抱き合う二人(号泣/よかったね、ベン)

巨大化したペニーワイズに死の光を見せられて宙に浮くリッチーを弱虫のエディがずっと手に持っていた庭の柵で突き刺します。弱虫のエディが友人のために勇気を振り絞ったのです。「やった!僕、ペニーワイズを倒した…!」とリッチーを助けられたことに喜ぶエディでしたがその身体にペニーワイズの鋭い腕が貫通し、無残にも殺されてしまいます。(ここもとても…切ないです)物語も終盤だろうと思っていたのでここで死人が出てしまうとは思いませんでした…。

ペニーワイズの餌が自分たちの中にある恐怖からくるものだと気付いたルーザーズたちはペニーワイズを「小さな存在」だと思いこませるためそれぞれが言葉で「お前なんか怖くない」「卑怯者」「弱虫ピエロ」(うろ覚え)と罵倒します。恐怖に打ち勝ち強い心を持ち始めたルーザーズの言葉にペニーワイズはだんだんと小さく、縮小し、最後は赤ちゃんの姿になってしまいました。(この赤ちゃんのシーン、そんなにいじめないでよぉーと手をふりふりしながらぶりっ子しているようでなんだか可愛く思えました(笑))そうして出てきた心臓をみんなで鷲掴み潰して、ペニーワイズは死にました。

ペニーワイズを無事退治し、洞窟から逃げ延びたルーザーズ。(残念ながらエディの亡骸は運べず埋まってしまいました)

ペニーワイズを退治したと共に過去からのトラウマを乗り越えた彼らはそれぞれ新しい生活にと向かいます。

結局ペニーワイズの正体何だったんでしょう。人の心にすくう恐怖から生まれた存在?白い肌に真っ赤なお鼻をしたピエロは人に恐怖を与えることでしか見向きもされない悲しい生き物だったのかもしれません。はじめはただ一緒に遊びたかっただけなのかもね。
ITはホラー映画ではありますが単純に「怖い」と感じるだけではなく少年たちの成長っぷりに涙するところも多く恐怖ではなく感動の涙がこみ上げるシーンもたくさんありました。ITは「1」より「2」が圧倒的に面白いです。きっとホラー映画が苦手な方でも楽しめるはず(グロいのが苦手な方には注意が必要かも)

【追記】
物語のラストでリッチーが恋人の橋に刻んでいた「E×R」の文字、「E」はエディのことでしょうか?エディがペニーワイズに殺されてしまったとき誰よりも嘆き悲しんでいたのは単に友達として一番の仲良しだったからなのかと思いましたが、友達以上の感情があったのかもしれません。ペニーワイズが言っていたリッチーの秘密は彼が「ゲイ」ということなのでしょうか。ベンがヘバリーを想い続けていたように、リッチーがずっとエディに恋心を抱いていたかは分かりませんが過去と向き合うきっかけを得て当時の恋心を思い出したのかもしれませんね。少年だったころに打ち明けられなかった想いをそこに刻んでいったのだと思います。